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公開記念トークイベント第二弾

萩原健太さん×藤本国彦さん トーク・イベント・レポート

2024年10月6日@TOHOシネマズ 日本橋

1974年8月、ポール・マッカートニー&ウイングスのアルバム『バンド・オン・ザ・ラン』(1973年)がUKチャート1位を独走する中、アビイ・ロード・スタジオで撮影されながらも50年の間お蔵入りし、“史上最もブートレグが出回った作品の一つ”(Paul McCartney official)と言われていた本作。

 

初の劇場公開に、「感慨深いですねぇ。こんな大きなスクリーンでこの映像を見る日が来るとは!」(萩原健太さん)、「ほんとですね。映画で観られることが奇跡的ですね」(藤本国彦さん)と客席に向かって語られたお二人。同じ思いを抱いていたファンの方々からの共感が広がる中、トークイベントはスタートしました。

 

冒頭、2010年『バンド・オン・ザ・ラン』デラックス・エディション発売時に、ポール・マッカートニーに直接電話インタビューをされたという萩原さんのお話に会場は興味津々に。

ウイングスはどんなバンド?との質問に「ウイングスの良さはリンダにある」と話していたというポール。「リンダのコーラスが聞こえるとウイングス、という感じがしますよね」と萩原さんが話されると「そうですね。やっぱり大きいですよね」と藤本さんも共感。「後は、あまり上手くないシンセね。決してけなしているわけではなくて、今のバンドのウィックス(Paul "Wix" Wickens:長年ポールのツアーに帯同(key))だったら、左手で難なくこなしてしまうようなフレーズを、一生懸命弾いているあの感じ、仲間が集まって、アマチュアぽい所もあるんだけれど、このメンバーじゃないと出せない音を出す所に、バンドのウイングスの魅力がありますよね。それをとても愛おしく感じます」と萩原さん。

そのインタビューで同じく語られていたというポールのバンド愛に関連して、“作品の中でも楽しいと話していたものの、自分の方が何でも上手くできて、決してバンド向きではないと思われるポール”が、「それでもバンドをやりたいという情熱を持っていた時のいいドキュメンタリー」(萩原さん)とのお話もありました。

 

途中、白隠慧鶴(はくいんえかく)の禅問答というタイトル“ワン・ハンド・クラッピング”に関連して、「1971年にジョンとヨーコが来日した際、白隠の禅画を購入していて、イマジンにも影響を与えているのでは」(藤本さん)というレアなエピソードが語られたり、作品に挿入されるインタビューに関して、「ロックンロール以前の音楽性に対する思いが本人の口から語られるのは興味深かった」(萩原さん)、「作品の冒頭に登場する今のポールや、「1985」をハンド・マイクでシャウトする姿も含めて、素顔のポールが観られるのがいい」(藤本さん)など、「色々と発見がある作品」(萩原さん)、とのお話も。

 

終盤、エディ・コクランなどの曲をギターで弾き語るバックヤード・セッションの最後に“古い曲ばっかりだな”、とポールが呟く場面に関して、「今やポール自身の曲が古い曲になっているわけですが(笑)。でも、今この映像を見返して改めて思い知るのは、若い頃つい気にしがちな“最先端じゃないといけない”とか“時代の空気感がないとダメだ”とか、そういう価値観がいかに曖昧なものかということ。歳をとっても全然衰えず現役感たっぷりの作品を作り続けてくれるポールのようなアーティストはそんなことをごく自然体で教えてくれますよね」と話された萩原さん。

続いて「ポールは変わらないですしね。作品を作り続けますし、ライヴもやり続けますし、生涯現役なのが、本当にすごいです」と藤本さんが話されると、「それをやりたくてもできない、ジョン・レノンという存在がいるからこそ、自分はやり続けるんだ、と思っていることもあるのかな、という気もしなくはないですね」と、萩原さんが話を継がれ、藤本さんと会場からも深い頷きがありました。他にも、本作はもちろんビートルズ、ポール、ウイングスはじめ、音楽シーンに精通する専門家として、また作品を愛するファンとしての視点から、時に笑いも誘いながら様々なお話が語られ、大きな拍手を持ってトークショーは終了となりました。

◎萩原健太(はぎわら けんた)

 

1956年生まれ。音楽評論家、ラジオDJ。早稲田大学法学部卒業後、早川書房編集部勤務を経てフリーに。TBS系『三宅裕司のいかすバンド天国』(89~90年)やテレビ朝日系『タモリ倶楽部』内「空耳アワード」(93年~)の審査員なども担当。音楽評論の傍ら、音楽プロデュース、コンサート演出、作曲・編曲等も手がける。主なプロデュース作品は米米CLUB『Go Funk』、山崎まさよし『HOME』、憂歌団『知ってるかい!?』、鈴木雅之『Funky Flag』など。主な著書に『70年代 シティ・ポップ・クロニクル』(エレキングブックス)、『ボブ・ディランは何を歌ってきたのか』(エレキングブックス)、『ザ・ビーチ・ボーイズ・ディスク・ガイド』(ミュージック・マガジン)、『ポップス・イン・ジャパン』(新潮文庫)、『はっぴいえんど伝説』文庫版(シンコー・ミュージック)などがある。

 

◎藤本国彦(ふじもと くにひこ)

 

音楽情報誌『CDジャーナル』編集部(1991年~2011年)を経てフリーに。主にビートルズ関連書籍の編集・執筆やイベント・講座などを手がける。主な著作は『ビートルズ216曲全ガイド』『ゲット・バック・ネイキッド』『ジョン・レノン伝 1940-1980』『ビートル・アローン』『ビートルズ語辞典』『気がつけばビートルズ』『365日ビートルズ』。映画『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Years』『ザ・ビートルズ:Get Back』『ザ・ビートルズ:Let It Be』『ザ・ビートルズの軌跡 リヴァプールから世界へ』などの字幕監修/監修も担当。最新編著は『アンダーグラウンド・ビートルズ』(本橋信宏氏との共著)と『アンド・ザ・ビートルズ vol.5/バッドフィンガー』。相撲とカレーと猫好き。

まだまだ続映中!ぜひ映画館で伝説のセッションを体験!

公開記念トークイベント第一弾

和田唱さん×藤本国彦さん トーク・イベント・レポート

2024年9月26日@TOHOシネマズ 日比谷

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9月26日(木)、『ポール・マッカートニー&ウイングス – ワン・ハンド・クラッピング』の初劇場公開を記念し、和田唱さんと藤本国彦さんによる上映後トークイベントが開催されました。

ミュージシャンの視点からビートルズの魅力を掘り下げ、特にポール・マッカートニーの大ファンとしても知られる和田唱さん(TRICERATOPS)、ビートルズ研究家として多くの書籍を執筆され、本作の字幕監修も務められた藤本国彦さん。本編上映後、満席の会場からの大きな拍手に迎えられてお二人が登壇。改めて客席に目をやりながら、「平日の夜にもかかわらず、満員完売ということですごいですね」(藤本国彦さん)、「この景色を見てワクワクしますね。嬉しくなってしまいました。ようこそ」(和田唱さん)と話されたお二人。和やかなムードに包まれる中、対談がスタートしました。

 

“ちょうど50年経つので、それだけでも公開の意味がありますね”(藤本さん)という本作、当時のポール・マッカートニー&ウイングスに関して、「この時のポールは32歳、ビートルズが解散して4年、油が乗っていますよね。改めて音楽と一体化しているな、って思いました」と和田さん。藤本さんからは「バンドで言うと『バンド・オン・ザ・ラン』(1973年)のナイジェリア・ラゴスでのレコーディング前にメンバーが二人抜けて、ポール、リンダ、デニー・レインの3人で録音して戻ってきて、ジミー・マカロック(G)が参加して音を足してリリースした後、大成功したんですよね。この作品は、ジェフ・ブリトン(D)も一緒にナッシュビルで「ジュニアズ・ファーム」をレコーディングして戻ってきた所です。ポールとしてはまた5人のバンドに戻れて、ツアーも含め、さあこれからやろうという時期でもありますね」と収録当時の背景解説がありました。

 

6月にリリースされたアルバムと共に、非公式バージョンが最も出回った作品という逸話が公にされている本作、藤本さんももちろん、20代の頃知り合いからVHSをプレゼントされ“ハマってしまってよく観ていたし、ピアノの弾き語りシーンが特に好きだった”という和田さん。藤本さんから「ポールのピアノに関してはいかがですか?」と問われると「やっぱり最高ですね。自由自在というか。決してテクニカルなことをやっているわけではないんですけれど、うまいんですよね。それに、最後のギター弾き語りもそうですけれど、ピアノだけで弾き語るポールがこんなに長く観られる作品も他にないですよね」とやり取り。貴重なシーンに関して藤本さんから「ピアノ弾き語りは確かに『ゲット・バック』で少しあるくらいですね。曲も、10代の頃ポールが作った〜映画の中でキャバレーソングと話していましたけれど〜ペギー・リーに贈った「Let’s Love」とか、「Take It Away」のB面に入っていた「I’ll Give You A Ring」、シナトラにプレゼントしようとして断られたという「Suicide」などレア目の曲でしたね」と曲に関して言及があると、「僕、コピーしていたんですよ」と和田さんがそれぞれの曲のフレーズを歌い、「こんなに素敵な未発表曲があるポールっていうのもすごいですよね」と話され、会場が湧く場面も。

 

途中、和田さんから「一言で言って映像はシュールですよね。なぜならば1974年という時代だから。映像の質感、カメラアングルも含めてロードムービー的というか、ポールを観たいのになんでカメラが動かないんだって思うくらい。すごく70年代らしいなと思いました」との考察や、高校時代に雑誌Oliveに取材された際、「憧れのミュージシャンは?という質問に“ウイングスの時のポール・マッカートニー”と答えていることをよく覚えているんです。当時オアシスが出てきた位のタイミングにそう言っていて。ずっと好きだったんですよね」という秘話が披露される一幕もありました。

 

終盤に、藤本さんから「ビートルズが60年代のバンドだとすると、ウイングスは70年代のバンド。ウイングスの“オーヴァー・アメリカ”(1976年)は、ビートルズのシェイ・スタジアムのようなもので、それぞれ半ばの65年、75年頃が頂点と、同じ様な道を歩んでいるんですよね。その中でこの作品は(その頂点を迎える)直前のポールのエネルギー、熱意が一番出ている頃ですよね。1回じゃ足りないので、また観に来ようと思っています」と話されたのに続き、和田さんからは、「これを期にウイングスに改めてハマりたい気分になりましたね。最近『レッド・ローズ・スピードウェイ』を聞き直して、個人的評価がぐっと上がっている。そういうのが楽しいんですよね」とのお話があると、「そうですね。『バック・トゥ・ジ・エッグ』までいいアルバムを出していますのでね」(藤本さん)「ぜひ、皆さん、ウイングスを。他の映像も映画館で皆さんといっしょに観られる日が来たらいいな、と思っています」(和田さん)と話され対談は終了に。

最後の写真撮影では、「皆さん一緒に撮りましょうよ!」という和田さんの呼びかけで、客席とお二人、全員でウイングスのハンドサインをしての記念撮影も行われ、和気あいあいとしたイベントは終了となりました。

◎和田唱(わだ しょう)

 

1975年生まれ。1997年メジャーデビューしたロックバンド、TRICERATOPS(トライセラトップス)のボーカル、ギター。作詞作曲も担当。ポジティブなリリックとリフを基調とした楽曲、良質なメロディセンスとライブで培った圧倒的な演奏力が、幅広い層から大きな評価を集めている。2018年からソロ活動も開始し、これまで3枚のアルバムをリリース。昨年上演された「Musicalのだめカンタービレ」の音楽も担当。他アーティストへの作品提供も多数。

今年は、3rdソロALBUM「BIRDMAN」をリリースし、ワンマンツアー「一人宇宙旅行 2024 -MEETING BIRDMAN-」を東京、名古屋、大阪で開催した。また、11月からはTRICERATOPSの全国ツアーが予定されており、アグレッシブな活動に今後も大きな注目を集めている。

 

<9月26日 、10月6日 ご登壇>

◎藤本国彦(ふじもと くにひこ)

 

音楽情報誌『CDジャーナル』編集部(1991年~2011年)を経てフリーに。主にビートルズ関連書籍の編集・執筆やイベント・講座などを手がける。主な著作は『ビートルズ216曲全ガイド』『ゲット・バック・ネイキッド』『ジョン・レノン伝 1940-1980』『ビートル・アローン』『ビートルズ語辞典』『気がつけばビートルズ』『365日ビートルズ』。映画『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Years』『ザ・ビートルズ:Get Back』『ザ・ビートルズ:Let It Be』『ザ・ビートルズの軌跡 リヴァプールから世界へ』などの字幕監修/監修も担当。最新編著は『アンダーグラウンド・ビートルズ』(本橋信宏氏との共著)と『アンド・ザ・ビートルズ vol.5/バッドフィンガー』。相撲とカレーと猫好き。

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